しばらくの間、俺はそこから動く事ができなかった。


目を閉じて静かに呼吸を繰り返す。


聞こえてくるのはそんな自分の呼吸音だけだった。


なにもかもがわからない今の状況で、自分がどうすればいいかもわからなくなっていた。


こんなの悪い夢だとしか思えない。


俺の手足が切断され、出口のない屋根裏に閉じ込められているなんて……。


俺は目覚める前の出来事を思い出そうとしていた。


平凡な人生だったかもしれないが、今よりはずっとマシな生き方をしていたに違いない。


そう、思ったのに……。


いくら記憶をたどってみても、数時間前に目覚めてからの記憶しか思い出す事ができないのだ。


俺はどこで暮らして、何をしていたんだっけ?


自分にそう聞いてみても、自分の情報が何一つ出てこない。


怖くなってハッと息を飲むと同時に目を開けた。


変わらない、狭苦しい屋根裏部屋が目の前に広がった。


瞬間、目を開けて閉まった事を後悔した。