七瀬は、いつだって泣かなかった。 幼稚園のころ、節分で鬼がやってきた時も、 小学生のころ入った、お化け屋敷も。 先に泣いたのはいつだって僕で。 彼女はそのたんびに、僕の手をギュッ捕まえて「大丈夫」って笑っていた。 そう。 君はどんな時でも笑ってた。 転んだ時も、怒られた時も。 ずっとずっと。 でも、そんな君が最近は笑わなくなった。 いや、正確にはあの頃のように無邪気に笑わなくなった、が正解かもしれない。