後、1点だった。




最低でも1点取れば延長になったのかもしれない。




私は俯いて泣きそうになるのを堪える。




涙を流すのは私じゃない。




先輩達だから。




私達は球場の外に出て、先輩達を待つ。




みんな揃ったところで、陸先輩がみんなに話し始めた。




「みんな応援ありがとう。俺達の夏は終わったけど、本当に楽しくやれた。甲子園行けないのは、本当に悔しい。だから、お前らは今日の俺たちを見て、もっと上に行ってほしい。」




そう言って頭を下げると、先輩達は抱き合った。




泣いてなんかない。




泣いて終わるんじゃなくて、笑って終わる。




負けても、笑えるのはそれぐらい頑張ってきたから。




そんな姿に私は感動した。




バスに乗って学校に戻るまで、先輩達は何も話さなかった。




やっぱり悔しいのかな。




バスから降りると、渚砂先輩が陸先輩にお疲れ様と言っているのが見えた。




陸先輩はその時初めて涙を見せた。




みんなの前では見せなかった表情。




そのぐらい渚砂先輩の存在は大きいんだなと思った。




監督がみんなに集合をかけて話し始める。




「3年のみんなは今日で引退となる。本当に今までよく頑張った。甲子園の目標は後輩に引き継ぐことになったが、この3年間は決して無駄じゃなかったと言えるくらい成長してくれたと俺は思っている。本当に、お疲れ様。」




監督が話終わると先輩達が集まって土揚げした。




みんな最後は笑って解散した。