その時、私の視界のすみで何かが動いた。それは私とケイの間に割って入る。


「はじめましてー、ケイくん?」

私はそのショウの後ろ姿を見ていた。
随分と久しぶりに聞いたような気がする、これ。このうん臭い間延びした口調。馴れない人にはそうなるのかと心の中で苦笑するしかない。



そう、私はあれだけ緊張していたのにも関わらず、この場がどんな意味を持つかも知らないで、のんきにそんなことを思っていたのだ。



そんな私とは対照的にケイはピクリとその声に反応した。


「___っ」

言葉にならない驚きがその瞳だけに浮かんでいる。


私は悟った。
やはり二人は知り合いだったのだ___。


「よろしくねー?」

ショウはケイの驚きには気がついていないようだった。それどころかケイを知り合いだとも認識していないようにも見える。


いや、ショウはらしくもなく私とケイの間に入ってきた。なりふりかまっている余裕がなかったのだろう。


今も、本当は漆黒の瞳だけ鋭くケイを観察しているのではないか。


ショウは何かケイに感じている。そしてそれを隠している。



「………レヴィア様、お知り合いですか?」




言うなれば、お互い知らん顔をしているといったところか。



「うん、前から話してあった人」


だからケイもレヴィア様って私のこと人前で呼んでるんでしょっと心の中で突っ込みつつも、私はなりゆきを見守るように当たり障りなく答えた。


が、

「そうですか。レヴィア様もこれからもよろしくお願いいたします」


私の意に反してこの場は何も起こらず、先生に関しては一言も声を発することなく、私は二人と別れることになった。


こんなこと言うのもなんだけど、本当に不思議なくらい何もなかった。





___でも、きっとそう思っていたのは私だけだった。