外泊届は昨日の内に出したし、その申請時に例の親切な女の人が、ケイの方からも学校に連絡してあったことを教えてもらった。


その結果、何者にも止められることなく私たちは地上へと上がれている。


とは言え、それが良かったのか悪かったのかはよく分からない。


それもそのはず、何事もなくスムーズにいきすぎて、逆にケイと会うという緊張に私たちは敏感になっていた。どんなに軽口を言ったところでお互いのそれが見える。


なんとなくぎこちない私たちはとうとう地上への最後の扉にたどり着いた。手袋をちらっと確認するとまだ待ち合わせの七分前。


だが、ケイのことだから待ち合わせの三十分前に来たって、そこに立っていそうだ。
いや、もしかしたら時間きっちりに来るタイプか。


まあ、この扉を開ければ答えが分かる。
ケイのことをまた一つ知ることができる。


「開けないのか?」

先生がそっと言った。
先生は鈍感だから空気も読めないはずだが、こういうときの心の機微に敏感だ。

きっと本能が働いているのだろう。


鈍感でもないし空気も読めるショウは、沈黙を貫いている。


「___いえ、ちょっとボーッとしてただけですよ」


私はそう言いつつ、外へと踏み出した。




そして思う。
本物の太陽はこんなにも眩しいのかと。



「ケイ」
私はそれに呼びかけた。


「レヴィア様」


普段は気にもかけない鼓膜が震える感覚。
ああ、本当に、


本当に、この一瞬で、私のこの一週間に匹敵するのだから、彼には敵わない。