緋女 ~後編~





「もう。ホントにひどいよねー。………私にだけ」


彼女は冗談めかしてそう言うが、瞳は俺を探るようなそんな鋭い光を宿していた。

俺は軽口を叩いていたつもりだけど、彼女はそうでもないのかもしれない。

もし彼女が全てを思い出しているなら、彼女は絶対俺に嫌われているだろうと思うだろうから。



そうだ。お前は俺の特別だ。お前だけが特別だ。
そう言えたらどんなにいいか。



でも___

「自惚れないでください。レヴィア様だけ特別扱いなどしません」

そんな意地悪なことしか言えない。


「してよー」


彼女が笑っているのに俺はそちらを向けなかった。


「でも、そうだね。今日は私がご飯作るって決めたから、おやつみたいな軽いやつ食べたいね」

「もうティー・タイムも終わってますよ」


「えー。じゃあ、なんかある?」


周りを見渡せば服屋に、宝石店、それにアンティークショップと女が喜びそうなものばかり立ち並んでいるのに、それは目につかないのか彼女は俺にそう聞いてきた。


とはいえ、俺が欲しいものなどここにはないが………




「あっあそこ行ってもいい?」

俺の返事を待たずにそう言った彼女に俺はそっと息をはく。せっかく二人で出かけたものの、何をしていいか分からないなんて笑えない。

彼女は俺と繋いだ手を引いて、見つけたところへと歩く。

それにしても失敗した。
混んでいるとはいえ、国王の重臣しか着用が許されないローブを被った彼女と、城内勤務の制服を来た自分達は目立ちすぎる。

それによく見たら彼女がローブの下に国立魔法学校の制服を着ているのが分かってしまう。


彼女の正体がバレたり、国の中心人物と恐れて下手に手を出されはしないだろうが、どこに行っても視線を集める。


極めつけは、繋がれた手に注目されるから落ち着かない。



「あれ、閉まってる?」

「えっ?………あー」


彼女に視線を戻すと、なぜか花屋の前にいた。


「この時間は閉まってますよ」

それだけ教えると、彼女は納得がいかないというようにこちらを見た。



「じゃあ、なんでバラの花束だけいっぱい置いてあるの?」