なんと……夏休みに入っても憂鬱になるとは。
映画館も併設された大型ショッピングセンターに足を踏み入れた私は、大きなため息をついた。
「あれー?山本さんじゃない?」
「ほんとだー!おーい!奏(かなで)ちゃーん!」
うわぁ…と心の底でげんなりしながらも笑みを浮かべる。
「あ、偶然だねー。元気だったー?」
うまく話せてるかな…
男女2人ずつ計4人で訪れていたらしいクラスメイトたちに遭遇した。
「うんうん、めっちゃ元気ー!
…ってあれ、何か映画見るの?」
気づかれた…もはや逃げ道はないか…
「あ、うん。〇〇〇ってや「え、マジで?うちらもー!!あ、席隣じゃん!一緒にいこーー!!」
かぶせ気味で言葉を遮られ腕を掴まれ引きずられ…
半ば強引に席に座らせられた。
およそ2時間後
隣に座っていた女子が泣きじゃくっているのを見て感動が冷めたことに苛立ちを覚えながら席を立つ。
「あれ、最後まで見ないの?」
ちょうどスタッフロールのところで立ち上がった私に声をかける。
「あー…うん。塾あるのすっかり忘れてて…今思い出したから急いで帰るね。」
「えーマジで!?塾いってんの!?
まだ一年生だから良くない?」
「うん…でも親がうるさくて。
じゃー私はこれで。」
「うん、じゃーねー!!」
「塾頑張って!!」
私は笑顔で手を振りながらその場を後にする。
まぁ、塾なんてウソだけど。
あーあ。
映画見た後マンガの新刊探そうと思ってたのに。
私は駆け足で家に向かった。


