ベッドに入り、部屋を真っ暗にして目を閉じた。

 青い光の中を上へ下へと揺れているクラゲを思い浮かべる。

 なんだか、眠れずにいると、突然、スマホが鳴り出した。

 自分で設定したのだが、昔の黒電話の音にしているので、すさまじい。

 ひい。
 近所迷惑っ。

 だが、飛び起きたのは、それだけが理由ではない。

 慌てて手にしたその画面には、『葉月秀人』の名前があった。

 葉月さんっ。

 よかった!
 もう捨てられたかと思ってましたっ。

 いやいや、今日来なかっただけでしょ、と秋成が居たら突っ込まれそうなことを思う。

「も……もしもしっ」
と緊張のあまり、喉が締め付けられ、絞め殺されるニワトリのような声を出してしまう。

 いや、そんな最中のニワトリの声なぞ、聞いたことはないのだが……。

『明日香?
 風邪か?』
と秀人の声がする。

 それだけで、なにか、ほっとした。