「いや、彼女は今度結婚するんだそうだ。
それで、思い出に、と言われた」
と部屋に上がるなり、秀人はそんな言い訳を始めた。
「そんな理由で許されると思うんですか。
じゃあ、如月先輩が結婚するから、その前に思い出にとか私に言ってきたら、それはオッケーなんですか」
と言うと、
「そんなこと言ってきたら、壁面緑化のこやしにしてやる」
人の形によく生えるだろうと言ってくる。
「緑の人間の像にしてもいいな……」
と無表情に呟く秀人に、
この人の場合、本気でやりそうで、怖いよ、と思っていた。
「それで、結婚するからって言われて受けたんですか」
と言うと、
「いや、いきなりだったんで逃げそびれて。
ああ、お前に怒られるな、と思って、ぼんやりしてた――」
と言ってくる。
「……逃げてくださいよ、そういうときは」
と言ったあとで、明日香は、
「でも、私もぼんやりしてました」
と白状した。



