その夜、チャイムが鳴ったとき、明日香は少し迷った。
戸を開けて、しとめるべきか。
開けずに、しとめるべきか。
電話で、しとめるべきか。
おや、おかしいな、と思う。
しとめる、しか動詞が出てこないが。
私はあの人を彫像かポスターとしか思っていなかったはずなのに。
誰かが。
例えば、受付嬢のような綺麗な人が、街角のポスターに、あら、素敵、と思ってキスしてたって、別にいいではないか。
……いや、よくないか。
それはそれで、おかしな人だから、そっとしておいてあげた方がいい、と思った。
じゃなくてっ、と葛藤していると、
「明日香、開けてくれ」
とドア越しに自分が居る気配を察して、秀人が言ってきた。
「開けません」
「……何故だ、開けてくれ」
今、何故だ、の前に、明らかに間がありましたよね。



