帰りの廊下でやっと美冬と二人で話すチャンスを得ることができた。


「先輩、なるみと何を話していたんですか?」

「秘密。まあ、悪いことではないと思うけど」

「そうですか……」


会話が途切れてしまった。廊下に俺のスリッパの音が響く。


「先輩はどうして、今の大学で福祉の勉強をしているんですか?」

少し、考えた。

「俺の学部、福祉心理っていうんだけどさ。支援が必要な人の心理を学ぶっていうのに興味があったんだ。意思疎通が難しい人だって、いろんなことを考えて生きているんだっていうこともわかったし」

「それで、自閉情のことにも詳しいんですね」

「いやいや、まだまだ勉強しはじめたばかりだから。でも、俺も美冬と同じような状況だったから、否応なしに身についていたこともある」

「それって……?」

「俺の場合、きょうだいではなくて、親が、なんだけどさ」


そう、母が。


「え……? お父さんかお母さんが自閉症なんですか?」


どうしてそうなるんだ!? 全く、美冬は面白い。