特別な君のために


どう言葉をかけていいのか、俺の貧困なボキャブラリーからはなかなか見つからない。

そのうち、沈黙を破って美冬が語り始めた。

「妹の障がいがわかったのは、私が小学校へ入学した頃でした。以来、我が家の中心は妹です。妹が過ごしやすいように、少しでも成長できるように、パニックを起こさないように、危険な目に遭わないように」

「それ、大事だよね。まずは安全の確保って、俺もいつも思ってる」

言い終わってから、ちょっと失敗したなと思った。これでは勘のいい奴なら母の存在がバレる。

だけど、美冬は気づかなかったようだ。

「私はいつも、妹に気を遣って生活していました。
鍵はいつだって二重ロック。刃物は手の届かないところに置く……って、今では私より大きくなっちゃったんですけどね。
話し言葉だけだと伝わりにくいから、マカトンサインっていう手話のようなものも覚えたし……でも、それが今回はあだになっちゃって」