それは彼女――――シオンが昼過ぎに城へ遊びに来た事からだった。

いつもだったら彼女は午前中に顔を出して俺の仕事の様子を伺い、昼食を一緒に食べて午後少し遊んで帰る。そんな事を繰り返していたので、今日はちょっと来るのが遅いとは思っていた。

何かあったのかとは思ったが、目の前にいる彼女は元気そうだったのでそれ程気にはしなかった。


シオンは特有の黒宝石の瞳をきらきらと輝かせながら、嬉しそうな様子で俺に箱を一つ差し出した。その箱は綺麗な青い紙で包まれていて、色味の違う青いリボンが掛かっている。

そういういかにも女の子が好きそうな物に、彼女が興味を示したのが珍しいな、と思いながら俺はその箱を受け取った。

ただ純粋に、彼女からの初めてのプレゼントが嬉しかった。


しかし箱の中身を見た時、正直言って何がそこに入っているのか分からなかった。

拳ぐらいの固まりに、正体不明の白いどろりとしたものが全体にかかっていて。その上に赤や黄色の何かがちりばめてある。箱を開けるのと同時に溢れ出した匂いは、焦げ臭いうえにやたらに甘い。それが何個かぐちゃぐちゃと入っていた。


「……これ、何だ? シオン」

「えっ……?!」


シオンはその言葉に顔を真っ赤に染めた。


「あ、あの…………初めてで、あまり上手く出来なかったんですけど、アレックス陛下に食べてもらおうと思って……」

「え?! これ、食べ物なのか?」


シオンの顔はみるみるうちに曇ってしまい、今にも泣き出しそうだった。