プレゼントは何が欲しいかと問うと

彼女は微笑みながら何もいらないと答えた。










「……実際、そう言われるのが一番困るんだよな」

「変に欲が無くていいじゃありませんか」


この難問に頭を抱えている俺に、ジェイクは書類に目を通しながらからかうようにそう言った。

暑い午後の昼下がり。ギラギラとした太陽がまだ頭上で眩しいほど輝きながら、濃い色の影を地面に落としている。

いつもだったら夕方までかかるような案件の会議が珍しく早く終わり、時間を持て余した俺。城に隣接している、いつもジェイクが籠もっている騎士団の執務室へ来ていた。座っているだけでも汗が滲み出てくるというのに、相変わらずこいつは涼しい顔をして書類に埋もれていた。

部屋に顔を出したとたんに、あきらかに嫌そうに眉を歪めたが気にしないでいつもの長椅子に腰掛ける。

俺だって馬鹿じゃない。

手土産に持ってきたこいつの好きなちょっと値の張るワインをちらつかせると、ジェイクはあきれたように額に手を当てて溜め息を吐く。

しかしそれと一緒に出てきた、開封するのは就業してからにして下さい、という言葉。それにはここにいてもいい、という許可も含まれていた。