最近昼を過ぎ、公務中でも満腹感でそろそろ昼寝でもしたいな、と思っていると俺宛に必ず苦情が数件舞い込んで来る。苦情主は城のコック長だったり、メイドたちを統括するお局だったり。側近や警備兵から来る事もしばしば。

直訴してくる苦情の内容は、みな同じだった。


『あの黒猫をどうにかしてくれ』


みんな何か勘違いをしている。

どうにかできるのなら、俺が真っ先にどうにかしている。それが出来ないから、日々その苦情に頭を悩ませているというのに。




「――――器物破損、外的傷害、心身的傷害それとこれは……コック長からのものですね、食物の窃盗。今日はこんなところでしょうか」


夕刻前。

私室にまで来て、嬉々として苦情報告を読み上げるジェイクが憎かった。俺はそんな報告を珍しく机に向かって座りながら、頭を抱えて聞いていた。


ジェイクは城に使える騎士団の師団長だ。

そして俺と同い年の幼馴染みでもある。


まだ俺が玉座に座る前に、王家の相続争いから身の安全を守るために、何年か北にある田舎町で暮らしていた事がある。まだ子供だった俺は暇を持て余し、身を隠している屋敷を度々抜け出していた。

その時に出逢ったのが、この悪友ジェイクだ。

彼は俺が王位に就く事になり街を離れる時に、面白そうだと城のあるこの街へ着いて来たのだ。そして持ち前の要領の良さで騎士団に潜り込み、今では師団長にまで上り詰めていた。

そして幼馴染みという特権を振りかざし、国王である俺の部屋へのこのことやって来る。気に食わない事に顔も外面もいいので、周りの受けはいい。

しかし俺は、この男の底意地の悪さを知っている……