美音がお礼を言う前に、彼は店から出て行ってしまう。 本当は知っていたはずなんだ。 他の店に行っても、初回特典盤は置いていないって。 買いたかったはずなのに、譲ってくれた。 心が温かくなる優しい人。 最初の印象は嵐みたいな人。 自分と同じ曲を好きになった人。 とても気になる人だった。 『……ありがとう』 誰もいないそこに、何となくお礼を言ってCDを手に取る。 譲ってくれた彼こそ、理久だった。