なんか思ったよりピンピンしてるし、病人だというのに優雅に本なんて読んでやがるし、ベッドの隣には大量に贈られて来たであろう、見舞いの花束がある。正直羨ましいが憎らしい……。

「良いのかよ? 呑気に本なんて読んでて」

「仕方ないだろ? 上からは安静にしていろって言われているんだから」
 
読んでいた本を閉じたレオンハルトは、隣の机に置かれている見舞いの果物を一つ手に取ると俺に投げてよこす。
 
それを右手で受け取った俺は、美味しそうに赤く染まっている林檎を見下ろして言う。

「どういうつもりだ?」

「羨ましがっているお前に慰めをと思ってさ」
 
その言葉にカチンときた俺はこめかみをピクピクさせながら言う。

「お前のそういうところ……本当にムカつくよ!」
 
イライラしながら受け取った林檎を一口かじりしソファに腰を下ろす。

男に慰められたってちっとも嬉しくねぇ。それがレオンハルトってのがもう……。

「体の方はもう良いのか?」

「お前の治癒魔法のおかげで大事に至らなかったよ」

「それなら良かったけど」

「ありがとなブラッド」
 
レオンハルトは目を細めると軽く笑う。
 
まさか直接お礼を言われると思って居なかった俺は、なんだか照れくさく感じて視線を窓の外へとずらした。

「お前が死ぬとミリィが悲しむからな。仕方なく助けてやったんだ」

「俺もそうだが、お前だって死んだらミリィは悲しむぞ」

「……」
 
その言葉を聞いて一週間前のことを思い出す。

【あなたが死んでしまったら、悲しむ人が居るってことを考えて下さい】。その言葉が脳裏を過り俺はレオンハルトに問う。