ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「ブラッド。あなたまさかその等価交換の力を使って、道化師って人たちを倒すつもりなの?」
 
やっぱり直ぐにその答えに辿り着くよな。まあ当然か。

「最終的にはそうなるな。どの道この瞳がある限り俺は、人として普通の生活を送ることなんて出来ないけどな」

この瞳がある限り俺の中であいつに対する負の感情が消えない限り、幸せになることなんて出来ない。

愛する者と一緒になれたとしても、必ずどこかで思い出すことになる。俺の心に深く刻まれたあの忌々しい記憶とあの時に抱いた感情を――

だからなんだろうな……俺が一人の女の子を好きになれないのは。

「だから俺はこの命を使ってでもあいつらを倒すんだ。そして家族の……セシルの敵をこの手で取ってみせる」

再びそう決心して拳に力を込めた時だった。

「そんなの……駄目よ」

「えっ……」
 
オフィーリアは伏せていた顔を上げると俺に抱きついてきた。

「うわっ!」
 
何が起こったのか分からなかった俺は目を瞬かせる。まず目に飛び込んできたのが金髪の髪で、次に目に飛び込んできたのは、目に涙を浮かべているオフィーリアの顔だった。

「お、オフィーリア……?」
 
どうしてオフィーリアが泣いているんだ? 今の話しの中で彼女が傷つくようなことがあっただろうか?

「何で泣いて……」
 
彼女はそっと俺の頬に触れると言う。

「自分の命を捨てるようなこと……簡単に言わないで」

「っ!」
 
彼女の頬を伝う雫が俺の頬へと落ちる。

「この世界には命を持って生まれた人たちがたくさん居ます。その中でも……ずっと生きたくても生きられない人だっているんです」
 
オフィーリアの目から涙が溢れポロポロと落ちていく。その姿を見た俺は目を丸くした。