数日後に迎えに来ると言っていた両親も迎えには来てくれなかった。

「帰してよ! 俺をみんなのところに!」
 
施設に来てから半年が経った頃、俺の実験は最終段階へと入りかけていた。

「そうだ。一つ言い忘れていたよ」
 
男は左手を使っておれの右目を見開かせる。

「君の両親ね、君を【返せ返せ】うるさかったから……殺しておいたよ」

「っ!」

「それで君の妹は、実験材料になるかと思って連れて来たんだけどさ――」
 
男が指を鳴らすと真っ暗だった隣の部屋に電気が点いた。
 
俺はゆっくりとそっちへ視線を動かす。

「せ、……セシル!?」
 
そしてそこには、寝台の上に変わり果てたセシルが横たわっていた。
 
「うわぁぁぁぁ!!」
 
その光景を目の当たりにした俺を吐き気が襲った。

「うぅ……ぐっふっ……!」

何とか吐き気を我慢しながら男を睨みつける。

「許さない……! お前だけは絶対に許さない! ……殺す! 殺す!! 殺す!!! 殺してやる!! お前だけは俺の手で殺してやる!!」
 
俺はただひたすらその言葉を繰り返した。怒り、殺意、憎悪――それらを静める事が出来なかった。
 
しかし男は俺の言葉にクスリと笑うと言い切る。

「今の君には無理だ」
 
そして男の左手は、俺の右目から眼球をえぐり出した。

「ああああっ!」
 
右目の奥に今まで感じた事がない程の痛みが走った。

「め、目がぁぁぁ!」
 
右目を抑えたい衝動に駆られるが、両手は枷によって固定されているため、自由に動かす事が出来ない。