黒魔法――それは【穢れた魔法】だ。
 
俺たちが普段使う魔法とは違い、危険な魔法がいくつも存在する禁忌の魔法の集まりだ。

昔はよく使われていたそうだが、現在は魔法協会が定めた法律により、認められた者しか使うことを許されていない。

「そんな……まだ黒魔法が存在していたなんて」
 
オフィーリアはブツブツと何かを言っている。そんな彼女の握る手に力を込めた。

「……? ブラッド?」
 
それに気がついた彼女は俺の顔を見上げる。
 
俺は覚悟を決めてオフィーリアの目を見つめて言う。

「お前に話したい事がある」
 
俺はオフィーリアを連れて客室から出て自室へと向かった。

☆ ☆ ☆

「お前言ってたよな? この右目を見たいって」

「う、うん」
 
右目から眼帯を外した俺はゆっくりと右目を見開いた。

「っ!?!」
 
俺の右目を見たオフィーリアは驚いて目を見開いた。

そして【どうして?】とでも言うように俺を見つめてくる。

「驚いたか? 紅い瞳で」

「……っ」
 
オフィーリアは何も言わずただじっと俺を見てくるだけ。
 
これが当たり前の反応だ。

ミリィとレオンハルトに見せた時だって、同じような反応だったんだからさ。

「これは俺の推理だけど、オフィーリアを狙っているのは道化師で間違いないと思う」

「……どうしてそう言い切れるの?」
 
俺は真っ直ぐオフィーリアを見て告げる。

「お前が探している男に心当たりがあるからだ」

「えっ!」
 
オフィーリアは肩を震わせると拳に力を込める。