ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

★ ★ ★

「……」
 
本部の中に向かって行ったあの人の背中が脳裏を過る。

「あの時と同じだ」
 
小さくそう呟き守護石を掴んで心を落ち着かせようとする。
 
違う……あの人は違う。あの人が死ぬだなんて事は。

『行かなくて良いのですか?』

「っ!」
 
頭の中で女性の声が響いた。その声の主には覚えがあり私は魔剣レーツェルに触れて応える。

「ここで待っているように言われたのよ」

『それでも行くべきだと私は思います』
 
彼女の言葉に私は唇を噛んだ。

『今のあなたは戦える。守れる力を持っているのよ』

「……こんな私でも誰かを守ることが出来るの?」

『出来ますよ』 

果たしてそうだろうか? 何度も助けたいと願って剣を持っても、結局それは叶うことはなかった。

でも今は少しでもその可能性があるのなら。今度こそ――
 
私は鞘からレーツェルを抜く。

「分かった。じゃあサポートを頼んでも良い? 【レーツェル】」

『任せて下さい』 
 
魔剣レーツェルは光を放つとその光で私の体を守るように包み込んでいく。

「おい! そこに居たら危ないぞ!」
 
後ろの方でそんな声が聞こえる。しかし私は振り返ることなく、あの人が向かって行った本部に向かって走り出す。

「レーツェル。もしもの場合は私の魔力を使って良いからね」

『そうならないようにしてください』
 
レーツェルの言葉に耳を傾けながら私の姿は炎の中へと消えて行った。