ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「ねえ」
 
オフィーリアに声をかけられた俺は我に返る。

「どうした?」

「早く本部に行きましょう。なんだか……」
 
彼女は守護石を握ると言う。

「嫌な予感がするの」

「嫌な予感?」
 
彼女の瞳は揺れていた。嘘を言っている様にも見えない。

「分かった。あんたは出来るだけ遠くに逃げろ」

「あ、ありがとう! 助かったよ!」
 
男は深く頭を下げると走って行ってしまった。

「オフィーリア。行くぞ!」

「うん!」
 
俺とオフィーリアは再び警察本部に向かって走り出した。
 
本部に向かえば向かうほど周りの景色がどんどん酷くなって行く。

すると俺の後ろを走っていたオフィーリアがふと足を止めた。

「オフィーリア?」

オフィーリアが見つめる先に俺も目を向ける。
 
そこには酷く損可した建物があり瓦礫の間から、血塗られた手が助けを求めるようにこちらへと伸ばされていた。
 
俺は思わず目を逸らす。しかしオフィーリアは目を逸らす事なく、その手を取ると祈るように言う。

「汝の魂よ……安らかに」

「オフィーリア……」
 
俺でも嫌になるほどの光景なのに、彼女は躊躇うことなく祈りを捧げた。その姿はまるで女神そのものだった。