「いつも通りの日々ってのにちょっと退屈しててさ」

「あなた馬鹿なの?」
 
呆れた顔を浮かべたオフィーリアに馬鹿と言われてしまった。
 
だって探偵なんて依頼がなければ暇だし、怪盗だって依頼がなければ暇なんだよ。だからいつも十時まで寝ているわけで。

「こんな見ず知らずの私と関わるだなんて」

「見ず知らずじゃないさ」
 
俺の言葉にオフィーリアは伏せていた顔を上げる。

「俺と出会ってこうしてケーキを食べている。それはもう見ず知らずの関係じゃないさ」
 
そう言いオフィーリアに微笑みかける。
 
彼女は驚いた顔をしていたが、小さく笑うと優しい笑顔を俺に向けてくれた。その笑顔を見た俺の頬が熱を帯び、心臓の心拍数が上がっていく気がした。

「ブラッド!」
 
聞き覚えのある声が聞こえ俺の肩が大きく跳ね上がる。そしてゆっくりと後ろを振り返る。

「やっと見つけた!」
 
そこには息を切らしたミリィが立っていた。
 
ここに来たってことは書き置きを見たって事で良いんだよな? しかしこの状況は非常にまずい。

「お、おはようミリィ! 勘違いするなよ? 俺は決して彼女を口説いていたわけじゃなくてだな」

「そんなの! 今はどうでも良いよ!」

「えっ?」
 
ミリィが許してくれた?! これは幻か? それとも幻聴か?!

「何かあったの?」
 
俺に変わってオフィーリアがミリィにそう聞く。

「え、えっと……」
 
そうだ。ミリィは彼女の事をまだ知らないんだ。

「ミリィ。彼女はオフィーリアだ」

「初めまして、オフィーリアです」
 
オフィーリアはミリィに軽く頭を下げた。ミリィも慌てて頭を下げると言う。

「は、初めまして。ブラッドの世話係のミリィです」

「おい、誰の世話係だって?」
 
俺はジト目でミリィを見る。しかしミリィは胸の前で腕を組むと、ギロリと俺を睨みつけた。