「世界中の男たちよ……すまないな。俺みたいな者が生まれてしまって」
 
思ってもいない言葉を口にして目に涙を溜める。
 
そんな俺の言葉を目の前で聞いていたミリィは呆れたように見てくる。

「いい加減そのナルシスト発言やめてくれない? 聞いてて苛つくんだけど?」

「な、何故だ……。何故お前だけ俺の魅力が分からない?!」
 
そう言いながら机を勢い良く叩き立ち上がった。
 
小さい頃はよく俺の後を着いて回っていた彼女が、いつの日からかこんな冷酷な女性へと成長してしまった。

もうあの可愛らしい笑顔を見れないと思うと。

「お兄ちゃんは悲しいぞ!」

「あんたがいつ私のお兄ちゃんになったのよ?」
 
ミリィの酷い言葉が矢となり突き刺さって、体から力が抜けた俺はそのまま椅子に座り込む。
 
しかし直ぐに顔を上げて言い返す。

「お前より年上なのは事実だろ?!」
 
そう言って目を細めながら紅茶の入っているカップを持ち一口飲む。

「三つ違うだけでしょ? 今年で二十一になるってのに、いつになったら仕事探すわけ?」

「ぶふぅっ! がっ、げほごほっ!」
 
ミリィの突然の言葉に飲んでいた紅茶を思わず吹きそうになってしまった。
 
何とか息を整えてから目に涙を浮かべて言う。

「いやいやっ! 何を言っているんだミリィ! ここが俺の仕事場だろ!」
 
目を細めて紅茶をすすっているミリィはカップをゆっくり置くと言う。

「依頼なんてたまにしか来ないじゃない。それで本当にこれが仕事だって胸張って言えるの?」

「うっ!」
 
ミリィの言葉が追い打ちをかけるようにグサグサと刺さる。