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「んっ……」
 
目を覚ました俺の目に飛び込んで来たのは自室の天井だった。

「俺……」
 
俺はどうなったんだ? たしか、レオンハルトと一緒にクラウンと戦ってそれから……。

「そうだ。クラウンの攻撃を受けて倒れたんだ……」
 
それを証明するかのように、俺の体には包帯が巻かれている。

「これじゃあしばらく外出は無理か」
 
そう呟きゆっくり体を起こすと、俺の目に翡翠色の光が目に届いた。

「ん? 何だこれ?」
 
こんな物もっていたか? と思いながら、首から下げられているネックレスを取る。

「これ……」
 
そのとき一瞬、脳裏に白銀の髪が映った。

「いっ……」
 
軽い頭痛が頭を走り額に手を当てる。

「なんだ? 今のは……?」
 
俺はネックレスを見下ろす。

「……ま、いっか」
 
ベッドから下りてネックレスを机の上に置き部屋の中を見回す。

「あれ? 何で部屋にベッドを二つ置いたんだっけ?」
 
俺一人で使っている自室ならベッドは一つで十分ははずだが?

すると下の階で屋敷の扉が開く音が聞こえた。

「ミリィか?」
 
目が覚めたことを知らせるため、俺は自室から出て一階へと向かった。

何か大切なことを忘れている気がする。そう思いながら──
 
微かに空いていた窓から風が吹き込みカーテンをなびかせる。太陽の光が翡翠石を照らした時、その宝石を優しく撫でるように一人の少女が、俺が出て行った方を見つめていた。






ヴェルト・マギーア 星の涙 Act.1 END