「……三日待つ。それ以上は待たないし答が出ないのなら、強制的にお前を連れて行くぞ」
 
お兄様はそう言うと部屋から出て行った。

「お兄様……」
 
答なんてとっくに出ている。
 
私はブラッドの側に居たい! ブラッドと一緒に生きて行きたい! でも……。
 
私は立ち上がってお兄様の後を追った。

「お兄様!」
 
私に声に気がついたお兄様は、ゆっくりとこちらへと振り返る。

「三日なんていりません」

「……どうするんだ?」

「お兄様と一緒に行きます。今夜にでもここを出ましょう」
 
お兄様は表情を一切変えず、私の言葉に軽く頷いた。

「本当にそれで良いのか? 後悔はないのか?」

「ないと言えば……嘘になります。でも私は!」
 
私は守護石を掴んで真っ直ぐお兄様を見つめて言う。

「彼を守るために行きます」
 
ブラッドを守るために私はこの屋敷から出て行く。そうすることで、彼が私を守って傷つくことはなくなる。命を落とすことはなくなる。

「……分かった。なら、お前がここに出て行くと言うなら、一つ条件を出そう」

「条件?」

「この街の人たちの記憶から、お前に関することの全てを忘れてもらうことだ」

「っ!」
 
それって……どういうこと?!

「今回の事件で魔法教会が星の涙の存在に気づき始めている。そうなるとブラッドさんは魔法教会から目を付けられる。最悪、星の涙に関する情報を全て吐かせるまで監禁するだろう」

「そんな……」

「魔法教会の連中はそんな奴ばかりだ。だから俺はブラッドさんの側から離れるべきだと言ったんだ」

「彼を……魔法教会から守るために?」
 
お兄様は苦笑しながら頷く。

「本当はお前の隣にずっと居てほしい存在だと思っている。あそこまで妹のためにやってくれた人だ。幸せな日々を送るお前たちの姿を見たかった」

「お兄様……」
 
お兄様の言葉に涙が溢れた。