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「お前が好きだ……誰よりも愛してる」

「っ!」
 
彼の握っていた手から力が抜け私の手の中から零れ落ちた。

「ブラッド! ブラッドお願い! 目を開けて!」
 
私は必死にブラッドの名前を呼んだ。しかし彼の意識が戻ることはない。
 
レオンハルトはクラウンの居た方へと目を向ける。しかしそこにはもう、クラウンの姿はなかった。

「急ごう、オフィーリアさん。早く病院にこいつを」

「待って下さい!」
 
私はレオンハルトの服の袖を掴んだ。

「お願い! 私に治癒させてください!」

「……駄目だ」

「どうして!」

「さっきのブラッドの言葉からして、オフィーリアさんが魔法を使うってことは、命を削るってことなんだろ?」

「っ!」
 
私は袖を掴んでいた手を放す。

「悪いけど、このまま俺に着いてきてくれ」
 
レオンハルトはブラッドを抱き上げて先に行く。

「でも……もし間に合わなかったら……」
 
私は手のひらで顔を覆う。
 
ブラッドが死んでしまったら、私はこの先生きていけない。ブラッドが側に居てくれないと……。

「ブラッド……私もあなたを!」

「その男の言うと通りだぞ。オフィーリア」

「っ!」
 
聞き覚えのある声が聞こえ私は顔を挙げた。

「よくこの場所が分かったな」

「あれだけの魔力のぶつかり合いを感じたら直ぐ分かるさ」
 
フードを深く被った男はこちらへと歩いて来る。でも私は直ぐにその人が誰なのか分かっていた。

「な、んで……?」
 
どうしてあなたがここに居るの? だってあなたはあの時に──

「大きくなったな、オフィーリア」
 
フードを被っていた人はフードを取ると、優しい眼差しを私に向ける。

「すっかり美人さんだな」
 
私は振り絞った声で言う。

「アルバ……お兄様……」