「まさ、か!」
 
あいつの持ってる剣はまさか!

「いやああああ!!!」

「っ!」
 
オフィーリアの悲鳴に気づき、入口に向かっていたレオンハルトは直ぐにこちらへと振り返る。俺の姿を見て慌てて駆け寄ってくる。

「ブラッド!!」

「ブラッド……いや……ブラッド!!」
 
オフィーリアは口元に手を当てながら涙を流している。そんな彼女に俺は手を伸ばす。

「オフィ、リ、ア……泣くな」
 
俺の手をオフィーリアは握る。レオンハルトは直ぐに傷の具合を確かめる。そして俺の体の様子を見て、青ざめた表情を浮かべる。

「……心臓をやられてる……」

「っ!」
 
レオンハルトの言葉を聞いてオフィーリアは言う。

「待っててブラッド! 今直ぐ癒やしのキスを!」

「駄目だ!」
 
俺は直ぐに声を上げる。それに二人は驚く。

「そんなの駄目だ! はあ……絶対、お前には、魔法を……使わせない」
 
絶対にオフィーリアには魔法を使わせない。あの日、俺はそう決心したんだ。少しでも長くオフィーリアと居るためには、魔法は絶対に使わせない!

「でも……でもブラッドが!」

「俺は、大丈夫だ……はあ、レオンハルト」

「それ以上喋るな! 心臓をやられてるんだぞ!!」

「俺は、死ねない」
 
レオンハルトに体を起こしてもらい、オフィーリアの涙を拭う。

「まだ、大切なことを、お前に言ってない」

「ブラッド……?」
 
俺は空いている方の手でオフィーリアの頬に触れる。

「この先、お前と生きるためには、死ねないんだ……」
 
その言葉を聞いたオフィーリアの目から涙が溢れる。これじゃあ何度拭ってやってもきりがないな。

「オフィーリア……」
 
俺は最後の力を振り絞って、オフィーリアに口づけをする。そして──

「お前が好きだ……誰よりも愛してる」
 
最後にそう言い俺の意識は途絶えた。