「……なに?」

「返す」
 
たった一言だけそう言い俺は彼女に守護石を返した。
 
彼女は少し驚きながらも目の前に掲げられた守護石を掴む。

そっと自分の元に引き寄せると、安心したように翡翠石を指先でなぞった。

「悪かったな。お母さんの形見だと知らず脅すようなこと言って」

「……良いよ。返してくれたから」

彼女は優しく言うと守護石を首に掛け直した。

「それで……その剣の事だけど」
 
彼女は不安げな表情を浮かべると言う。

「あなたの言う通りその剣は【魔剣】と呼ばれているものよ。その魔剣の名は――レーツェル」

「レーツェル……」
 
聞き覚えのない名だった。魔剣レーツェル――一体どんな力を持っているのか。

「この魔剣は代々私たち一族が大事に守ってきた剣。だからそれを手放すわけには行かないの」
 
私たち一族? 守ってきた剣?

「お願いその剣を返して」
 
彼女は瞳を揺らしながら頭を下げた。
 
その姿にぎょっとした俺は慌てて口を開く。

「わ、分かった! とりあえず頭を上げてくれ」 
 
机の上に置いてあるレーツェルを掴んで彼女の手の中に戻す。

「あ、案外簡単に返してくれるのね」

「まあな」
 
とりあえず魔剣の存在を確かめる事が出来ただけ進展はあったか。……残り五本。