ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「ブラッド！」
　
俺は直ぐにオフィーリアの体を抱き上げ、レオンハルトが居る方へと後退した。

「二人とも無事か！」

「なんとか……この通りな」
　
俺はレーツェルから手を離す。それを見ていたレオンハルトは溜め息を吐いて言う。

「まったく……無茶ばかりしやがって。この件が落ち着いたら、お前らのことについて詳しく聞くからな」

「はいはい」
　
レオンハルトは土煙が上がっている方を見て言う。

「クラウンはどうなったんだ？」

「クラウンは生身の体でまともに神の断罪を受けた。生きていたとしても、しばらくの間は動けないだろうな」

「そうか……。とりあえず、今回の任務は達成ってことで良いな？」

「ああ」
　
俺は拳を作ってそれをレオンハルトへと向ける。それを見たレオンハルトも拳を作ると、優しく俺の拳に押し当てた。

「さあ、早くここから出よう」

「そうだな。オフィーリア俺の手を──」
　
そのとき微かだが右目が反応した。嫌な予感が脳裏を過り、俺はとっさにオフィーリアの体を横へ押した。

「きゃっ！」
　
オフィーリアの手の中からレーツェルが零れ落ち、鈍い音を立てて落ちる。

「ぐっ！」
　
オフィーリアは俺に目を戻すと、俺の姿を見て顔を青くした。

「ブラッド……！！」
　
口の端から血が流れ胸の辺りが血に染まり始める。

「オフィ、リ、ア」
　
全ての動作がゆっくりと見え、俺はそのまま床へと倒れ込んだ。俺は薄れゆく意識を保ちながら、クラウンの方へと目を向ける。
　
しかしそこには神の断罪を受けて大怪我を負っているクラウンの姿はなかった。左手に剣を構え、右手を俺にかざしながらクラウンは笑っていた。

「っ！」
　
どういうことだ？　あいつはまともに神の断罪を受けたんだ。傷一つついていないわけが！　
　
そこで俺はクラウンの手の中にある剣から微かな魔力を感じ取った。