ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

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再び目を開くと私の体は四つの魔法陣に取り囲まれていた。そしてあの黒い帯が星の涙を狙って伸びてきていた。

「い、いやっ……」
 
体も壁の中へと引きずりこまれていっている。

「……」
 
私は息を吸って力強く叫んだ。

「ブラッド!!!」

「っ!!」
 
私の声に気がついたブラッドが思い切りジャンプすると私の元へと飛ぶ。それに気がついた私は目に涙を浮かべた。

「ブラッド……」

「オフィーリア! 今助ける!」
 
四つの魔法陣に向かってブラッドが手をかざした時、どこからかレーツェルが飛んできた。

「れ、レーツェル!」
 
レーツェルはブラッドの前で制止した。

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「レーツェル?」

魔法陣に向かって手をかざした時、どこからかレーツェルが飛んできて俺の目の前で制止した。レーツェルは微動せず俺の応えを待っているように思えた。

「まさか俺にお前の力を使えって言うのか?」
 
レーツェルは返事の代わりに前後に動く。

「……分かった!」
 
鞘を掴んだ俺はレーツェルを抜き、四つの魔法陣に向き直る。

「はあああ!」
 
そして四つの魔法陣と黒い帯を斬り捨てる。

「きゃっ!」
 
その拍子にオフィーリアの体も壁から切り離され、俺は直ぐにオフィーリアの体を抱きかかえた。

オフィーリアは俺の首に手回すと俺の顔を見つめた。

「ブラッド……良かった。あなたが無事で」

「俺も同じだ、オフィーリア。お前が無事で良かった……」
 
オフィーリアの体を抱きしめその存在を再確認する。彼女も応えるように俺の背中に腕を回した。
 
ゆっくりと地面に下り彼女の体を下ろす。

「オフィーリア。星の涙は大丈夫なのか?」

「ええ、今は平気よ」
 
オフィーリアは優しく微笑むと言う。そんな彼女の笑顔を見て、頬が熱くなるのを感じた。

「まさかあれを斬っちゃうなんてね」
 
俺たちはクラウンの方へと目を戻す。オフィーリアはクラウンを睨みつける。

「これで神の洗礼は行えない。諦めろ、クラウン!」

「そうだね。こうなってしまったら、もう諦めないとね。でも──」
 
クラウンは右目に魔力を注ぐと、俺が斬り捨てたはずの魔法陣を復活させる。

「そんな……」

「くっ……」
 
まずいと思ってレーツェルを構えた時、魔剣レーツェルの刀身が金色の光をまとい始める。

それを見たクラウンは表情を歪めた。