ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

✭ ✭ ✭

時を止めるってどういうこと? まさかさっきこの人が地面に剣を突き刺していたのは、あの黒い影を閉じ込めるためだったの?

「だからお前は俺が時を止める間にここから出て行け」

「で、でもどうやって?」

「星の涙が導いてくれる」
 
そう言う彼はちらっと星の涙を見る。

「星の涙。そいつを頼んだぞ!」

彼は剣に魔力を込めるとそれを地面へと突き刺す。時が止まり始めたのか辺りの色がまた失われ始める。

「なら、あなたも一緒に!」

「それは無理な話だ。俺はこの世界に残らないといけない」

「でも!」

「言っただろ? 約束はまだ果たされていない。だから俺はここで待つことしか出来ないんだ」

「……っ」
 
私の頬に涙が伝った。
 
どうしてだろう。この人を見ていると酷く胸が締め付けられた。いったいどうして?

「目を覚ましてくれ、オフィーリア!!!」

「っ!」
 
今度はちゃんと聞こえた。私の名前を呼ぶ声が、愛しい人の声が!

「お前には待っていてくれる人が居る。その人のところにお前は戻れ」
 
すると星の涙が青白い輝きを放つ。それに反応するように黒い帯が再び伸びてきた。

「早く行け!」
 
体が消えかける寸前、私はとっさに彼に手を伸ばして名を叫んだ。

「トト!!」
 
そこで私の意識は途絶えた。

✭ ✭ ✭

「やっと行った……」
 
これでようやく眠る事が出来る。
 
星の涙の魔力が完全に消えたせいか、黒い帯は黒い玉の中へと引っ込んでいく。

「またしばらくお前と俺の二人きりだ。お互いのんびり待とうじゃないか」
 
全員がこの地に揃う日までな。

「そういや……聞いて、なかったな」
 
俺の体も時が止まり始め意識が徐々に薄れていく。

「あの、女の、名前、を……」
 
そこで俺の意識は途絶えた。