ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

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「よし……」
 
剣に虹色の光をまとわせ黒い影を斬り捨てる。しかし黒い影は直ぐに元の形へと再生を果たす。

「ちっ……やっぱり、星の涙から魔力を吸ってやがる」
 
俺は反対方向に走って行く女の背中を見る。その後ろ姿が一瞬あいつに見えて俺は頭を左右に振った。

「たとえそうだとしても、俺にとってのあいつはあいつだけだ」
 
そう呟き再び剣を構えた時、黒い影が黒い玉へと分裂を始める。

「なんだ?」
 
分裂をした黒い玉から黒い帯が伸び始め、それは女に向かって飛んでいく。

「なっ!」
 
まさかあの女ごと自分の中に引き入れるつもりなのか!

俺は剣に魔力を注ぐ。

「我が魔剣エターナルよ。その力を用いて時を止めよ!」
 
俺の呼びかけに応えるように、【魔剣エターナル】はこの場の時を止める。女の背中まで迫っている黒い帯に向かって一気に距離を縮める。

目が見えなくても、エターナルが場所を教えてくれる、だから迷わず行く事が出来るんだ!

「解除!」
 
時を解除し俺は女まで伸びていた黒い帯を斬り捨てる。

「はあああ!!!」
 
それに気がついた女は驚いて俺を見る。

「い、いつの間に……!」

「おい、女。あの黒い帯には触れるなよ」

「えっ?」
 
女は黒い帯へと目を戻す。

「な、に……あれ?」

「あれは……」
 
まさかまた見る日が来るとは思っていなかった。やはり星の涙がこの世界にある限り、あれは何度もこの女を引き込もうとするだろう。
 
俺の考えが合っていれば、おそらくあっちの世界でも似たような事が起こっているのだろう。

「あの黒い帯に触れたら最後、お前は二度とあの世界には戻れなくなる」

「っ!」
 
俺の言葉に女は青ざめた顔を浮かべる。

「だから──」
 
俺はエターナルを構える。

「俺がこの世界の時をもう一度止める」
 
あいつを閉じ込めるにはやっぱりそれしか方法はなさそうだ。