ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「っ! オフィーリア!!」
 
嫌な予感がした。

あれは星の涙の魔力に反応しているんだ。心から欲しているように手を伸ばし、闇の中へと引きずり込もうとしている。

オフィーリア自身ごと!

「そんなこと……させるかぁぁぁぁ!!!!」
 
俺は右目に魔力を注ぎ、黒い鎖が巻き付く足へと魔力を送った。

「ブラッド?」

「うおおおお!!!」
 
足へと魔力を送ると黒い鎖にヒビが入り粉々になって砕け散る。

「へえ……」
 
クラウンは目を細めて俺の様子を伺っている。

「俺はまだ言っていないんだ……」
 
体を立ち上がらせオフィーリアを見上げる。

「まだ大切なことを、オフィーリアに伝えていない!!」
 
拳に力を込めて愛しい人の名前を叫ぶ。

「目を覚ましてくれ、オフィーリア!!!」
 
もう一度、俺の名前を呼んでくれ。もう一度、あの笑顔を向けてくれ。そうしたら俺は──

✭ ✭ ✭

剣を抜いた彼の周りを虹色の光が辺りを飛び始める。
 
その光に反応するかのように星の涙も光を放つ。

「あ、温かい……」

「お前は早く戻ることだな」

「えっ?」
 
剣を構える彼は目を細めると言う。

「お前のことをずっと呼んでいる奴がいる」

「っ! それって……」
 
もしかしてブラッド? ブラッドが助けに来てくれたの?
 
彼は横目で私の様子を伺うと言う。

「俺があいつを引きつける。だからお前は出口に向かって走れ」

「で、出口ですか?」
 
そんなものどこにあると言うのだ? 出口らしき物なんてどこにも……。

「言っただろ? お前の心が思うまま進めと」

「でも!」
 
剣を構えた彼は何も言わず、黒い影に向かって行く。

「良いから行け! このままだと戻れなくなるぞ!」

「っ!」
 
その言葉を聞いて私は彼と反対方向に向かって走り出した。