ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

レオンハルトは腰に付けていたホルスターから拳銃を抜き、銃口をクラウンに向ける。

「ブラッド! お前はオフィーリアさんのところに行け!」

「だ、だが」

「ここは俺に任せろ!」
 
クラウンに銃口を向けるレオンハルトは、魔力を持った弾丸を数弾撃つ。

「……頼んだ!」
 
俺はこの場をレオンハルトに任せ、オフィーリアの元に向かって走り出した。
 
クラウンは目の前に黒の守り(セイブルシールド)を張ると、撃たれた弾丸を跳ね返す。

「やっぱり普通の攻撃じゃ当たらないか」

「君だけじゃ俺に傷を付けるのは不可能だ。だから──」
 
クラウンは右目に浮かぶ魔法陣を輝かせると、一気にレオンハルトとの距離を縮めた。

「なっ!」
 
レオンハルトは直ぐに銃口をクラウンに向けようとする。
 
それを見たクラウンは笑うとレオンハルトの手首を掴み、そのまま後ろの壁目掛けて投げ飛ばした。

「っ!」
 
それに気がついた俺はレオンハルトへと目を向ける。

「レオンハルト!!」
 
壁へと投げ飛ばされたレオンハルトは、お腹に手を当てながら立ち上がる。

「結構頑丈なんだね」

「これくらいで倒れるわけないだろ?」

「でも肋骨のいくつかは折れたんじゃない?」
 
クラウンの言葉に表情を歪めたレオンハルトは、口の端から流れている血を拭う。

「大丈夫かレオンハルト!」

「ああ! 俺のことより早くオフィーリアさんの元に行け!」

「……でも」
 
この事件にレオンハルトを巻き込んだのは俺だ。これ以上、クラウンに関わったらいつ殺されるか分からないんだ。

「正直言うと、この場に君が居ても邪魔なんだよね。君たちが二人で俺に向かって来ても勝てるはずがないのに」

「はっきり言うじゃないか」

「本当のことだからね」
 
クラウンはそう言うと俺に目を向ける。

「ブラッド君。彼の言う通りいつまでそこで立ち止まっているのかな?」
 
ニヤリと笑うクラウンは更に言葉を続ける。

「このままじゃ君の大切な人が──死んじゃうよ?」

「っ!」
 
そう言って笑うクラウンに殺意が芽生えた。今直ぐ行ってあいつを殺してやりたい。
 
でも今はオフィーリアが優先だ! 早くオフィーリアの目を覚まさせないと!
 
俺は右目に魔力を注ぎ走り出す。

しかしクラウンも右目に魔力を注ぐと俺に向かって来る。