「もう目が覚めたのか? 思ったより早かったな」

「そんなことはどうでも良いの! その首飾りと剣を返して!」
 
俺は自分の後ろにある彼女の持ち物を見下ろし、申し訳なさそうに言い返す。

「悪いけどこれを今直ぐに返すわけには行かない」

「それをどうするつもりなの?!」
 
彼女の質問に俺は考える素振りを見せて言う。

「そうだな。とりあえずこのネックレスは鑑定に出して、どういう宝石なのか調べてもらうのと、この魔剣は魔法協会に差し出す」

「どうして……それは私の持ち物よ!」

「そう言われてもな。最悪このネックレスは直ぐに返って来ると思うけど、この魔剣だけは別だ」

俺の言葉に彼女は目を見開く。

その様子を見て俺は目を細める。
 
どうやらこの魔剣は彼女にとって必要な物らしい。

手放すわけにはいかないって言う雰囲気だな。

「じゃあこうしよう」
 
そう確信に至った俺はニヤリと笑う。

「君がこのネックレスと魔剣について話してくれたら俺は何もしない」

「……話してどうするの?」

「ちょっとした興味さ。これがどういう物なのか知りたいだけ」
 
俺の言葉に彼女は目を細めると軽く息を吐く。

「その首飾りは……私のお母様の形見よ」

「形見?」
 
彼女は窓の外を見つめると話し出す。

「お母様が亡くなる前に譲り受けたの。この宝石が私を必ず守ってくれるって」

「っ! じゃあこの宝石は!」

「守護石よ」

【守護石】と聞き俺の頬に汗が一滴流れ落ちた。
 
守護石――特別な魔力を秘めた宝石の一つで主を守る宝石とも言われている。

しかし主を守る宝石と言ってもそれはごく僅かな宝石だけだ。

全ての守護石が忠実に主を守るとは言われていない。

だからこの宝石は物凄く珍しい宝石で、どんな宝石よりも価値のある存在なんだ。

売りに出しても国一つ変える額になるだろう。

「私が無傷なのはその守護石のおかげなのよ。私はその守護石によって何度も命を救われて来たんだから」
 
俺は机の上に置いてある守護石を掴み彼女の方へと差し出す。