ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「やあ、久しぶりだねブラッド君」
 
クラウンは床に降り立つと、シエルたちに目を向ける。

「おやおや、よく見たらシエルじゃないか? こんなところでどうしたんだ?」

「パパに会いに来たのよ!」
 
ぱ、パパ?! じゃあシエルって子はクラウンの娘!?

「そうか、ならアルファを連れてもう戻りなさい」

「え〜! せっかくパパに会えたのに!」

「良い子だから言うことを聞きなさい」
 
シエルはシュンとした顔を浮かべると、アルファの隣に立つ。

「早く帰ってきてね」

「分かってる」
 
クラウンはアルファに目を向けると軽く頷く。それに気がついたアルファは頷くと、シエルと一緒にその場から姿を消した。
 
クラウンは俺たちに目を戻すと言う。

「てっきりアルファに殺られたと思っていたけど、ベータと戦って魔力を消費させたはずなのに、まだ魔法が使えるとは……」

「当たり前だ。大切な人を救い出すまでは、倒れることなんて出来ないからな」

「そうか。でも君がここに来ることは想定内だよ。それに儀式に使うために必要な四つの魔法陣への攻撃も想定内だ」

やっぱりクラウンには全部お見通しだってわけだ。

「どうやら四ヶ所のうち、二ヶ所はもう落ちたしね」
 
それを聞いた俺とレオンハルトはホッとする。

「だが残り二ヶ所には、ベータとガンマが待っている。生身の人間があの二人に勝つのは難しいよ」

「俺の仲間を甘く見てもらっちゃ困る。あいつらなら必ずやってくれる」

「そうだと良いね」
 
クラウンは胸ポケットから黒い手袋を取り出しそれを両手に付ける。

「それに神の洗礼を行うには、四つの魔法陣が必要だ。二ヶ所落としたらもう神の洗礼を行うことは出来ないぞ!」

「それはどうかな?」
 
クラウンの言葉に俺たちは目を丸くする。クラウンは右顔に付けていた仮面を外すと、目の中に浮かぶ魔法陣を不気味に輝かせる。