「はは……君って、おかしな人ですね」
　
アルファは苦笑すると体を起こす。

「さっきのは酷いんじゃないですか？　あそこまで普通しますか？」

「当たり前だ」
　
俺ははっきりと告げた。
　
こんな奴に手加減なんて出来るか。

「ま、君がそこまで怒る理由は分かります」

「だったら今直ぐこの場から消えろ！　俺たちの邪魔をするな！」

「それは無理だよ。これは僕の使命なんだからさ」
　
アルファは立ち上がると、自分の体に治癒魔法を掛け始める。

「……お前らにとってクラウンがやろうとしていることは、そんなに大切なことなのか？」

「そうですよ。それ以外に何があるって言うんですか？」

「お前ら元は人間だろ？」

「──っ」
　
俺の言葉にアルファは目を丸くした。

「……誰から聞いたんですか？」

「ベータから聞いた。お前たちは人造人間ではあるが元は人間だ。そしてクラウンはお前たちの命の恩人だと」

「……まったく。ベータはお喋りだな」
　
アルファはその話に触れられてほしくないのか俺たちから目を逸らす。

「君たちにそんな話をして、いったい何になるのやら」
　
まったくもって同意見だ。そんな話をされたところで、俺がこいつらに対する考え方が変わるわけでもないのに。

「理解してほしかったんじゃないのか？」
　
すると俺たちの話を聞いてたレオンハルトが言う。

「理解してほしかった、ですか。そうだね、少しでも君に僕たちの話をしていたら、考え方が変わったかもね」

「悪いがそれだけは絶対にない。どんな話を聞いても俺はお前たちのやろうとしていることには賛成できない」
　
クラウンの目的のためにオフィーリアや罪のない人たちが犠牲になるなんて、そんなの駄目に決まっている！

「じゃあ駄目元で話してあげますよ。僕たちベータとガンマは、元【奴隷区】出身なんです」

「奴隷区？」

「奴隷区は【人間の売買】を行っているところだ。人間以外にも【他の種族の売買】も行われていると聞いたことがある。でも奴隷区は何十年も前になくなったと聞いたが？」

「そう……奴隷区は主に貴族のお偉い様方がやって来るところだった。お偉い様方は自分の思い通りに動く人形が欲しかったんだ。奴隷区なら滅多に手に入らない人間だって、金を注ぎ込めば簡単に手に入れる事が出来るし、他種族を自分の奴隷として側に置くことで、その種族との関わりを持つことだって出来る」
　
そんな場所があったのかと思うと複雑な気持ちになった。こいつらがそんなところで育ったのかと思うと同情せずにはいられなかった。