「そんなことより早く頼む」

「……はいはい」
 
大広間の側に来たところで右目からタオルを取り魔力を注ぐ。

「大広間に人は居ないようだ。その代わりこの先の通路に見張りが五人居る」

「五人なら何とかなるか」
 
右目にタオルを巻き直し言う。

「何か策でもあるのか?」

「いや、さっきと同じ方法で行くつもりだ」
 
何でこいつ今まで生きて来られたんだ? もう少し考えたらどうなんだ……。
 
大広間の入口近くまで来た俺たちは、フードを被った見張りの様子を伺いつつ、レオンハルトが行動を起こす。
 
霧の魔法を使い視界を見えなくさせたら、奴らの背後に立ち眠りの魔法を掛けていく。全員眠らせたことを確認した俺はレオンハルトの側に駆け寄る。

「ほんとにお前の動きって無駄がなくて軽やかだな」

「そう思ってくれることは嬉しいが、少しは手伝ってくれたらどうだ?」

「無理だな。俺には周りを見張るって言う大事な仕事があるんだ」
 
オフィーリアを助ける前に無駄な体力の消費は避けたかった。最悪、今回はあいつと戦う可能性があると思っているからだ。そう思うだけで右目が微かに疼いた。

✩ ✩ ✩

「こんなところに地下に続く道が本当にあるのか?」

「ああ、そのはずだ。こういうところには仕掛けがあったりするんだ」
 
大広間の中へと入った俺たちは、地下へと続く階段を探していた。
 
レオンハルトは何を思ったのか祭壇の方へ歩いて行く。そして祭壇にある十字架を手間へと引いた。
 
すると何かのスイッチが入ったのか祭壇は鈍い音を立てながら横へとずれ、その下からは地下へと繋がる階段が顔を出した。

「これは凄いな」

「……在り来たりな仕掛けでつまらないな」
 
いや、つまらないって……そう言っても仕方ないだろ。

「つまらなくて良いんだよ。複雑だったら余計に時間が掛かるし」
 
地下へと続く階段を一つ下り下を見つめる。

「この先に」

オフィーリアが居る!

「行くぞ」
 
俺とレオンハルトは地下へと続く階段を下りていった。