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奴らに上手く紛れ込みながら、俺たちは大聖堂の中へと潜入した。

「意外と広いな」
 
この街では観光名所としても有名な聖母の愛大聖堂は、魔法教会が管理している建物の一つで、毎年冬に行われる【聖星祭】では神父や街の人たちが、知恵の女神エアに祈りを捧げるために、街で選ばれた聖女と共に願いごとを書いた星袋を夜空へと放つんだ。
 
毎年選ばれる聖女はどんなふうに選定されているのかは知らないが、ミリィも聖女になるために色々と頑張っていたことを思い出したよ。

「さて、ここからどうやって地下への生き方を探るかだ」
 
レオンハルトは数秒考えこむと俺に確認するように聞いてきた。

「ブラッド。お前の右目は魔力探知が出来るんだよな?」
 
その言葉にぎょっとした俺は一歩後ろへと下がった。
 
右目に関することはレオンハルトやミリィに詳しく話したことはない。なのにこいつはまた当てやがった。

怪盗レッドアイだとバレたのは少なからず良いと思っている。しかし右目の魔力のことについてだけは知られるわけにはいかない!

「な、何で……」

「怪盗レッドアイとして警察から逃げる時、お前は警察の行動を全て分かった上で逃げている。そう考えると、お前が俺たちの居場所が分かる何かを持っている、という答えにたどり着くんだ」

「で、でも逆に警察連中の服に発信機みたいな物を付けて、行動を見張っていることだって考えられるだろ?」

「その可能性を考えて、俺はお前が逃げたあとに全員の身体チェックを行った。でも発信機みたいな物は見つからなかった。だから確認を取るためにも、半信半疑でその右目が魔力探知出来るかどうかお前に聞いたんだ」

「あっ……」
 
俺は【やってしまった】と思い両手で顔を覆った。
 
最初に【何のことだ?】と言っていれば、右目が魔力探知出来るって思わせずに済んだかもしれない。
 
こいつ魔法警察よりも魔法探偵の方が向いているんじゃないのか?

「ブラッド。お前は俺たちにその右目で何か他に隠しているんじゃないのか?」

「っ!」
 
痛いところをつかれ俺は視線を逸らす。

「やっぱりそうなんだな?」

「……」
 
右目が魔力探知できるって知られたことは大目に見るとしよう。

しかし魔力の等価交換については絶対に知られるわけにはいかない。

「悪い……これ以上のことは言えないんだ」

「……そうか。なら無理はしないでくれよ」

「分かった」
 
レオンハルトも何かを思ったのか、それ以上聞いてくることはなかった。俺はすこしホッとしつつ、大聖堂の中を進んで行った。