✭ ✭ ✭

「見えてきたぞ」
 
ミューズたちと別れた俺は、レオンハルトと一緒に聖母の愛大聖堂に向かっていた。

「あそこにオフィーリアが!」
 
待ってろオフィーリア! 直ぐにお前のところに行く! だからもう少しだけ待っててくれ!

「なあ、ブラッド。さっきの男のことをお前はどう思う?」

「さっきの男?」
 
レオンハルトの言葉に俺はさっきのことを思い出す。

「あの男はオフィーリアを知っていると言った。つまりあいつもエアの末裔ってことだ」

「エアの末裔か……」
 
でもオフィーリアは自分を最後のエアの末裔だと言っていた。だからアルバの存在は知らないはずだ。

「ブラッド。ちょっと止まれ」

「何だ?」
 
レオンハルトに手招きされ、俺たちは直ぐ近くの路地裏へと入った。

「ここからなら大聖堂の入口が見える」
 
少しだけ顔を出して入口近くの様子を伺う。

入口の近くには数人の見張りがいることが分かる。

「やっぱり見張りは数人いるか」

「どうする? 正面突破と行くか?」
 
レオンハルトの言葉に頭を左右に振り言う。

「出来る限り見つかりたくない。それに騒ぎを聞きつけて、ベータやガンマが駆けつけて来ないとは限らない」

「そうか。なら、あれで行こう」

「……あれ?」
 
するとレオンハルトはフードを被っている奴らに手をかざす。

「霧(ミスト)」
 
魔法の効果で大聖堂の周りは霧で覆われ始める。

「いったい何をするつもりだ?」

「まあ、見てろ」
 
レオンハルトは気配を完全に消して、手慣れたようにフードを被った二人組の背後に立つ。そして眠りの魔法で眠らせた二人を担いでこちらへ戻って来た。

「着替えるぞ」

「き、着替える?」

「誰にも見つからずに潜入するなら、奴らに紛れ込んだ方が手っ取り早い」
 
レオンハルトはそう言いながらフードを剥がして羽織る。そんなレオンハルトを横目で見ながら俺も手渡されたフードを羽織った。