「っ!」
 
その手の温もりがブラッドに似ていて、初めて会う彼だというのに側に居るだけで凄く安心する事が出来た。
 
彼はいったい何者なの?

「目覚めたって言っても狙いは俺じゃないか……」
 
彼は私に視線を戻すと目を細めて言う。

「お前、持ってるだろ? 星の涙を」

「なっ?!」
 
なぜそのことを彼が知っているの?! 私は何も言っていないのに。

「やっぱりか。じゃあ、あいつの狙いはお前だ」

「あ、あいつ? 狙いは私?」
 
彼の言っている言葉の意味が理解出来なかった。いったい何のことを言っているのだろう?

「あいつって言うのはこの世界そのものの悪だ。俺はその悪を抑えるためにここに居る」

「あなた一人で世界の悪と戦っていたのですか?!」

「いや、一人じゃない」
 
彼は手の中にある剣を見下ろして言う。

「大切な相棒がいる」

「その剣は……まさか」
 
大きくうねりを上げる地面の中から、黒い小さな粒が無数に浮かび上がる。その粒たちは一箇所に集まると黒い影へと姿を変えた。

「あ、あれは、なに?」
 
今までに感じたことのない嫌な魔力の波動を感じた。魔力の性質は穢れた魔法に近い。

でも穢れた魔法よりも、もっとやばい力をあそこから感じる。

「意識だけ飛ばされて来ていても、今のお前は少なからずこの世界に干渉している。だからあいつは星の涙の魔力に反応して目を覚ました」

「っ!」
 
じゃあこの黒い影も星の涙を狙って!
 
そう考えるだけで足が震えた。

やっぱり私はこの星の涙を持っている限り、どこに居ても狙われ続けるんだ。それが私の……絶対に逃れられない運命!

「どうして……」
 
私の頬に涙が溢れる。

「どうしてみんなこの星の涙を欲しがるのですか? どうして……私が」

「……その星の涙のせいで今のお前が不幸なのだとしたら、それは全て俺のせいだ」

「えっ?」
 
彼は鞘から剣を抜く。

「その星の涙は俺が作った雫だ」

「っ!!」
 
彼が作ったってどういうこと?