「早く探し出してくださいよ。俺の魔力が尽きる前に」

「分かってる。ミューズ頼む」

「はい!」
 
ミューズは首から下げているヘッドホンを付けると、絶対領域が張られた壁に触れる。

「どうだ? 声は聞こえるか?」

「はい、もう少し待って下さい」

「声が聞こえるって?」

「ミューズはノイズを走らせることで周りの声が聞こえるんだ」

「じゃあ、ミューズが道化師の数少ないアジトを探し当てたのって」
 
ノイズを走らせて道化師たちの声を拾ったっていうのか?

「ナインが指定された場所に絶対領域の魔法を張り、そしてミューズがノイズを走らせる。二人いてこそ出来ることなんだ」

「……」
 
レオンハルトは確認するように聞いてくる。

「これで疑いは晴れたか?」

「……ああ。ミューズは間違いなく白だ」
 
俺の言葉に頷いたレオンハルトは、ポケットからタオルを取り出すと渡してくる。

「今のうちにその右目隠しとけ。ずっと閉じたままは辛いだろ?」

「ああ、ありがとう」
 
レオンハルトに渡されたタオルを巻き、俺はミューズに目を向ける。

「ここじゃない。ここでもない……あっ!」

「見つけたか!」
 
俺の言葉にミューズは頷く。

「道化師の一味らしき人たちが、聖母の愛大聖堂に集まっています」
 
聖母の愛大聖堂って、確かルークスの中でも一番大きい教会だ。そこにオフィーリアが!
 
ミューズは赤ペンを取り出すと、大聖堂以外にも四ヶ所に赤い丸を記す。

「大聖堂以外にも、道化師の人たちは大聖堂に繋がるこの一本道を使って、大きな魔法陣を描こうとしています」

「つまりその魔法陣さえ完成しなければ、神の洗礼を止められるってことだ」

「なるほど……」
 
それならまずその四ヶ所を叩かないといけない。

「ミューズ。今のことをレヴィナスさんに伝えて、応援を呼んでくれ」

「分かりました。今から連絡します!」

「ナイン。お前は部下たちを連れてここに向かってくれ」

「了解です。他の三つはどうしますか?」
 
レオンハルトは赤く丸をされたところに名前を書いていく。

「北にはナイン。南にはミューズ。東にはレヴィナスさんに向かってもらう」

「でもレオンハルトさん。そう簡単に上の人たちが力を貸してくれますかね? お偉いさんたちの力を借りるには、それなりの手続きが必要なんですよ?」

「そうだった……」
 
ナインの言う通り魔法教会から力を借りるには、それなりの手続き踏まないといけない。

「なら俺一人でオフィーリアのところに向かう。レオンハルトは西に向かってくれ」

「それは駄目だ。お前一人だと無茶するだろ」

「だけど!」

「その任、俺にやらせてくれないか?」

「っ!」
 
俺たちは声がした方へと振り返る。

「……誰だ」
 
暗い路地の方から靴音が響いてくる。俺たちは警戒しながら、声の主が姿を現すまで待つ。

「そんなに警戒しないでくれ、話しは全部聞かせてもらった」
 
俺たちの目の前にフードを被った男が姿を現す。

「お兄さん誰ですか? 俺たちの話を聞いていたってことは、もしかして道化師の仲間ですか?」
 
ナインの言葉にフードを被った男は頭を左右に振る。

「あいつらの仲間なら、何で俺がお前たちの手助けをしなくちゃいけなんだ?」

「じゃあ、あなたはいったい?」
 
俺は男の様子を伺っていた。するとフードの下から碧眼の瞳が見えた。

「オフィーリアと同じ目……」

「よくそこから俺の瞳の色が見えたな」
 
男は被っていたフードに手を掛けるとゆっくりと下ろす。

「そ、その髪の色は!」

「そこから先は言うな。俺はオフィーリアを知っている」

「……名前は?」

「アルバだ」