「そうですね。じゃあミリィとデートさせてくれるなら手伝いますよ」
 
その言葉を聞いてレオンハルトの表情が一瞬強ばる。しかし直ぐにいつもの表情に戻ると言う。

「それはミリィの返答次第だが良いか?」

「じゃあ協力しますよ。でもレヴィナスさんにはなんて言うんですか?」

「レヴィナスさんには、今回のことをありのまま報告する。そして街の人たちの避難を頼む」

「間に合いますかね?」

「……分からない。だが、最善は尽くすつもりだ」
 
レオンハルトの言葉に俺たちは頷く。

「まずはオフィーリアさんの居場所を見つけないといけない」

「……あ〜。だから俺たちを呼んだわけですか」

「そうだ」
 
レオンハルトは俺の方に振り向くと尋ねるように聞いてくる。

「ブラッド。絶対領域の魔法を知っているか?」

「ああ、知ってるよ。絶対領域の魔法は自分が指定した範囲の領域なら、自分の思うまま動かせたり、移動出来たりする魔法だろ?」

「ナインはその魔法を使うんだ」

「……まじか」
 
だからあのとき気配を感じさせず俺の背後を取ったのか! だから右目の反応も遅れたわけで。
 
てことは、怪盗レッドアイを追っている時に、絶対領域なんて使われたら簡単に捕まるってことだ。危ない危ない……。

「でもデメリットもあるんですよ」

「デメリット?」

「当たり前じゃないですか。絶対領域の魔法を保つには、それなりに魔力を使うんですから、翌日なんてぶっ倒れもんですよ」

「だ、だよな」
 
ナインの魔力はそれなりに高いのか……。もし俺が使ったらどれくらい保つんだ? ちょっと覚えてみるか。

「ナイン。今直ぐこの街全域に絶対領域の魔法を張ることは出来るか?」

「こ、この街全域ですか?! そんな無茶な……」
 
いや、流石にそれは無理だろ!

「頼むナイン。お前にしか頼めないことだ」

「……分かりました。これでミリィとデート出来るなら安いもんですよ」
ナインは渋々頷くと地面に手を付く。

「絶対領域!」
 
するとナインの手が付いているところから、紫色の光があちこちに走り出す。

「これが絶対領域の魔法か……生で見るのは初めてだ」

「ブラッドも習得しようと思えば出来るだろ?」

「そりゃ出来るけど時間は掛かる」
 
ナインは街全域に絶対領域の魔法を張り終えたのか、地面から手を放す