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「まさか奴らの狙いがオフィーリアさんの星の涙だったとは」

「……」
 
俺は顔を下げたまま小さく頷く。

「何で直ぐに話してくれなかったんだ?! もっと早く教えてくれれば、こっちで対処だって出来たんだぞ?」

「悪い……。オフィーリアにとっては誰にも知られたくないことなんだ」
 
俺は拳に力を込める。

「……それでも俺だけには話してほしかったぞ」

「…………ごめん」
 
もしレオンハルトに話していれば、何かが変わったのかもしれない。クラウンたちからオフィーリアを守れたかもしれない。

「今回のことは全部俺の失態だ。そのせいでオフィーリアが……!」

「……はあ」
 
レオンハルトは呆れたように息を吐くと、振り上げた拳を使って思いっきり俺の頭をぶっ叩いた。

「いってぇ!!」

「たった一回の失態でしょげてる場合じゃないだろ!」

「だからっていきなり殴るか?!」

「この前の仕返しだ」
 
俺は殴られたところを摩りながらレオンハルトを睨む。

「お前がここでへこたれている時にだって、道化師たちは神の洗礼の準備を着々と進めているんだぞ!」

「っ!」

「今動かないでいつ動くんだよ!」

「でも……」
 
今の俺じゃオフィーリアを助けることなんて出来ない。力と情報が足りないんだ。

「お前に盗めない宝石はないんだろ?」
 
その言葉に俺は目を丸くした。

「……は?」
 
俺の様子を見てレオンハルトは満面の笑みを浮かべる。

「だろ? 怪盗レッドアイさん」

「なっ!?!」
 
思ってもいなかった名前が出て来てとっさに立ち上がってしまった。

何でレオンハルトが怪盗レッドアイの正体を知っているんだ?!

「い、いつから気づいていたんだ?!」

「それはご自慢の頭脳で推理してみろよ」
 
レオンハルトには気づかれないようにしてきたつもりだ。ボロだって出したことない。なのに何で?

「俺が力を貸してやる」

「警察の方はどうするんだよ?」

「そんなの放っておけ」
 
いつもは【仕事が忙しい】、【仕事が優先だ】と言っていたのに、レオンハルトがそんなこと言うだなんて……。

「こりゃ明日は槍が降るな」

「明日があれば良いけどな」
 
レオンハルトは軽く笑うと俺に手を差し出す。

「俺にだって守りたい人が居るんだ。道化師たちの好きにはさせない」

「それってミリィのことか?」

「……そうだ」
 
俺はレオンハルトに手を取る。

「怪盗レッドアイの件はあとでゆっくりと話し合うとして、まずはオフィーリアさんの居場所を見つけないと」

「それなら策がある」

「策?」
 
レオンハルトは女神の涙の中の様子を見る。中ではミューズや他の部下たちが現場検証を行っている。