ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「はあああ!!」

「……諦めろよ」
 
しかしガンマは素手で振り下ろされたレーツェルを掴む。

「っ!」

「お前はもうクラウン様のもんだ」

「そ、それはどういう意味?!」
 
ガンマは掴んでいたレーツェルから手を放す。

「もう時期この街で神の洗礼が行われるんだ」

「か、神の洗礼?」
 
その名前どこかで……。

「神の洗礼によってこの街は生まれ変わるんだよぉ」

「生まれ変わる?」

「善者だけが生き悪者はみんな居なくなる」

「えっ?」
 
善者だけが生き悪者はみんな居なくなる?

『オフィーリア! 早く逃げさない!』
 
突然、彼女の焦った声が頭の中に響いた。

『神の洗礼を完成させてはいけません! 神の洗礼は……人を殺す魔法です!』

「っ!」

その言葉を聞いて心臓が大きく跳ねた。

「と言っても、今回は試すだけだがな」

「た、試す?」
 
いったい何を試すって言うの?

「星の涙がどこまでの範囲の魔法を使う事が出来るのか、というな」

「っ!」
 
ガンマの言葉に私の中で怒りの感情が芽生える。

「それだけのために、罪のない大勢の人々を殺すのですか!」

『オフィーリア! 早く逃げなさい!!』

「いや、殺すのはクラウン様じゃない」
 
ニヤリと笑うガンマは私の胸元に指をさす。

「殺すのはお前(星の涙)だ」

「えっ……」
 
私が……殺す?

「詳しいことは知らんがクラウン様が言うには、神の洗礼はエアが作り出した魔法らしい」
 
その言葉に私は目を丸くする。

「エアが……人々を殺す魔法を……作った?!」
 
どういうこと?! 人々を誰よりも愛しこの世界を作ったエアが、なぜそんな魔法を作ったの? どうして人を殺す魔法をエアが。

『オフィーリア! その者の言葉に耳を傾けてはなりません! エアは人を殺す魔法なんて作っていません!』

「で、でもレーツェル……今!」

「何をぶつぶつ言っているんだ?」
 
ガンマはゆっくりと私に近づいて来る。

「魔法の発動条件は星の涙を持つものを器にすることだ」

「……器?」

「オーギュストを抱える器ってことだ」
 
器? オーギュスト? いったい何のこと? もう何がなんだか分からなくなってきた。

「話しはここまでだ」

「っ!」
 
ガンマは私に向かって走り出すと大剣を振りかざす。私はとっさに後ろに下がる。

「その体でまだ動けるのか」

「……っ」
 
この体で動けるのはもう限界に近い。早くガンマから逃げないと! でもさっきの言葉が引っかかる。

「私が……大勢の人たちを殺す……?」
 
そのとき胸元になる星の涙が大きく脈打つ。

「うぅっ!」