ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

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「はあ……はあ……」
 
体を引きずりながら歩き続けなんとか街に着くことが出来た。

ここへ来る途中に何人かの人に声を掛けられて全て断るのが大変だった。

今は裏路地に入って体を休めている。

「さっきより楽になってきた……」
 
きっとブラッドが掛けてくれた魔法が発作を止めようとしてくれているのかもしれない。

「ブラッド……」
 
今頃ブラッドは酷い拷問を受けているかもしれない。死ぬほど辛い拷問を受けている可能性だってあるのだ。

「早く……行かなくちゃ」
 
早くブラッドに会いたい。会って一緒にあの屋敷に帰りたい。
 
壁に手を当てゆっくりと立ち上がった時だった。

「こんなところに居やがったのか」

「……っ!」
 
聞き覚えのある声に鳥肌が立つ。この声を聞き間違えるはずなんてない。私は声が聞こえた上を見上げた。
 
でかい図体。がっしりとした筋肉質の体格の背中には大剣が下げられており、灰色の瞳が私の姿を捉えていた。

「が、ガンマ!」
 
ガンマは屋根の上から下りると地面に着地する。

「探すのに苦労したぜ。ちょこまかと移動するもんだからよぉ」

「ど、どうしてここに?!」

「あぁ? そんなの決まってんだろ?」
 
ガンマは大剣を鞘から抜くと空いている方の手で私に指をさす。

「お前を攫いに来たんだよ。オフィーリア」

「こ、こんな時に……」
 
今の私じゃガンマとまともに戦うことなんて出来ない。レーツェルを使っても倒しきれるか。

「さあ、一緒に来てもらうぞ」

「……嫌です。誰があなた達のところに行くものですか!」
 
この人たちは星の涙を何かに利用しようとしているんだ。その目的は私にも分からない。でも絶対良くないことに使おうとしているのは明白だ。

「じゃあ俺と戦うか? 今のお前じゃ無理だろ?」
 
嘲笑うガンマを睨みつけながら私は鞘からレーツェルを抜く。そんな私の姿を見たガンマは苦笑すると言う。

「そうでなくちゃ面白くねぇな。けどよぉ、クラウン様からはお前を傷つけるなと言われてんだ」

「じゃあ潔くここで私に斬られなさい!」
 
私は剣を構えガンマに向かって行く。