ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「オフィーリア様が持っておられる星の涙は願いを叶えてくれる器」

「器?」
 
ベータは冷酷な目を瞳を俺に向けて言う。

「我々はこの世界から全てのオーギュストを消し去り、クラウン様は星の涙を使って我々を導く存在となられる。まずは手始めにこの街に神の洗礼(デウスバプティズム)行い、善者と悪者の線引をします」

「神の洗礼? 善者と悪者の線引だと?」

神の洗礼――聞いたことのない魔法だ。おそらく光魔法の一つだと思うが。

「待てよ……。こいつらはこの世界からオーギュストを消し去ろうとしているんだよな?」
 
神の洗礼をすることによって善者と悪者の線引がされる。こいつらにとって悪者がオーギュストの位置になる。

「おい……まさかお前らは!」
 
今回の推理は正直認めたくない。いや推理と言いたくない!
 
こいつらがやろうとしていることは【大量虐殺】だ。
 
神の洗礼によって善者だけが生き残り、悪者だと線引された人間はこの世から消え去る。この世界には善者だけが生き残りその善者を統率するのがクラウン。
 
クラウンがこの街を実験場所に指定した理由はただ一つ。

「オフィーリアの星の涙を使うのか!」

「その通りです」
 
淡々というベータを睨みつける。
 
何が善の行いだ! クラウンたちがやろうとしていることは立派な犯罪じゃないか! それを善だと言い張ることが出来るこいつらはイカれている!

「残念だがオフィーリアはこの街には居ない。オフィーリアが居ない以上、神の洗礼は行うことは出来ない!」

「そんなことありません」

「っ?」
 
ベータは俺に向かって歩き始めながら言う。

「私がなぜあなたをここへ誘き出したのか、その答えを良く考えてみて下さい」

「それは……」
 
ベータの言葉に俺の中である一つの可能性が過った。

「帰らない俺を……オフィーリアは探しに出て来る」

「その通りです。どうですか? 簡単な答えじゃないですか?」

「くっ!」
 
やられた。
 
最初から何もかもこいつらの手のひらで転がされていたんだ。

だったらこんなところで時間稼ぎをしている暇なんてない! 星の涙を使われてしまったら、オフィーリアが死んでしまう!

「話しは以上です。さあ勝負の続きと行きましょうか」

「くっそ……!」
 
オフィーリア! 俺が行くまで無事で居てくれ!!