ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「ば、化物かあいつ……!」
 
部屋の中にいたレギオたちは俺たちの戦闘についていけないのか地下へ逃げて行く。

「少ししたらレオンハルトたちが到着する。俺はそこまで時間稼ぎをさせてもらう」
 
そのあと直ぐにオフィーリアの元に向かう!
 
焔の槍を一掃したベータはギロリと鋭い目つきで俺を睨みつけた。

「こ、こえぇぇ……」

「あなたの力はそんな物ですか」

「はあ? どういう意味だ?」
 
俺の言葉に軽く舌打ちしたベータは声を低くして言う。

「貴様の本気はそんなものかと聞いているんだ!」
 
【あなた】から一瞬にして【貴様】に変わり、ベータが相当怒っていることに気がついた。

「手は抜いていない! こんなところで強力な魔法なんて使ったら、この辺りが一瞬にして吹き飛んじまうんだよ!」
 
自分を落ち着かせるために一回息を吐いたベータは目を細めると告げる。

「そうですか。しかしその心配は無用です」

「……なぜそう言い切れる?」

「それはとても簡単なことです。なぜならこの街は数時間もしないうちに、【地図から消える】のですから」

「っ!!」
 
ベータの言葉に目を見開く。

地図から消えるってどういうことだ?! まさかクラウンが何かする気なんじゃ!?

「何を考えているのですか?」

「――っ!」
 
いつの間にか俺との間合いを詰めていたベータは俺の腹に思い切り蹴りを入れ込む。

「がはっ!」
 
俺の体はそのまま後ろの壁に叩きつけられる。

「他のことに頭を働かせるよりも、まずは目の前のことについて考えたらどうですか?」

「くっ、……そ」
 
腹を抱えながら立ち上がりベータを睨みつける。

「ほう……私の蹴りに耐えられる体はしていますか」

「それなり……にはな。肝心なところで倒れたら大切な物なんて守れないからな」

「……そうですか」
 
ベータは軽く息を吐く。

「教えろ……クラウンはこの街に何をしようとしているんだ!」

「…………」
 
ベータは数秒黙り込むと口を開いて言う。

「クラウン様はこの街からオーギュストを消し去ろうとしています」

「オーギュスト?」
 
何だそれは? そのオーギュストがこの街と何か関係しているのか?

「我々にとってオーギュストとは人間の醜い本性を示しています」
 
まさかクラウンは善の行いのためにオフィーリアの星の涙を狙っているのか? 

いや、あいつが善の行いのための星の涙なんて使うはずがない。もっと他に何か。