ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「まさか……オフィーリアを俺から遠ざけるため?」
 
だとしたらあいつの本来の目的は俺じゃない。

「余計な話しはここまでにしておきましょう」
 
すると一人の女性の声がレギオたちの後ろの方から聞こえた。

「これはこれは、もう出て来てしまってよろしいのですか?」

「問題ありません。この人はここで排除しておくべき存在ですから」
 
レギオたちが道を作ると女性はその道を通って俺の前に立つ。

「初めましてだな。ブラッド」

「……誰だ、お前?」
 
女性にしては高身長で誰もが見惚れそうになる程すらっとしている綺麗な足。右目は青色の前髪で隠れており、ヴァイオレット色の瞳が鋭く俺に向けられている。

「私はクラウン様に忠誠を誓った者の一人――ベータです」

「ベータ……」
 
確かオフィーリアが言っていたクラウンに従う三人の内の一人。

「この前はアルファがお世話になりました」

「ああ」
 
彼女の口振りからしてアルファは生きているようだな。

あの魔法を受けて生きているなんてどんな体をしているんだ。

「お前たちの目的は何だ!」

「それは先程、あなたが口にしていたじゃありませんか」

「くっ!」
 
やっぱりこいつらの狙いはオフィーリアの星の涙!

「お前たちはオフィーリアの星の涙を何に使おうとしているんだ!」

「それはあなたには関係のないことです」
 
ベータは瞳を閉じると鞘に収まっている剣を握る。

「全力で行かせて頂きます」

「……っ」
 
ここで手を抜いたら確実に殺られる!

「……」

「……」
 
互いに睨み合う中で最初に動いたのはベータだった。ベータは剣を抜くと俺との距離を一気に縮める。

「なっ!」
 
俺はとっさに光の盾を張る。
 
こいつの速さはオフィーリアに匹敵する。いや、それ以上だ!

勢いよく振り下ろされたベータの剣は光の盾にヒビを入れる。

「くそっ!」
 
光の盾を張りながらベータに手をかざす。

「焔の槍(フレイムランス)!」

「っ!」
 
ベータの背後に数多の焔の槍が姿を現し襲いかかる。しかし彼女は俺から離れると直ぐに大勢を整え、剣から放つ斬撃で焔の槍を一掃した。